公募研究(2024-2025年度)

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公募研究(2024-2025年度)
A02班

メゾ複雑体顆粒による生殖細胞のゲノムインテグリティ維持機構の解明

山崎 啓也
山崎 啓也(研究代表者)
東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 助教

計画研究の概要

メゾ複雑体の一種である膜を持たないオルガネラの中には、特定の細胞種のみに存在し、その細胞種に特異的な機能を発揮するものがある。生殖細胞特異的なVasa bodyおよびMorc1 bodyは、そのような膜を持たないオルガネラの典型例であり、それぞれ細胞質と核内で観察される。Vasa bodyは、トランスポゾンRNAの切断の場として機能することが示唆されている。一方、Morc1 bodyは、抑制性ヒストン修飾であるH3K9me3を導入・保護する場となることで、生殖細胞のゲノムの安定性を脅かすトランスポゾンの抑制に寄与していると考えられている。

我々はこれまでの研究で、Vasa bodyの形成機構やそのトランスポゾン抑制における重要性を明らかにしてきた。さらに、Morc1 bodyの機能メカニズムについても、その端緒となる知見を得ることができた。本研究では、これらの先行研究の成果を基盤として、Vasa bodyとMorc1 bodyがどのようにしてトランスポゾンを抑制し、生殖細胞のゲノムの安定性を維持しているのかを解明することを目的とする。このために、これまで用いてきたin vitro相分離アッセイを活用することに加えて、共焦点蛍光顕微鏡、原子間力顕微鏡、クライオ電子顕微鏡、次世代シーケンシングといった、様々なスケールでの計測が可能な手法を用いて、定量的な解析を行う。

本研究を通じて、生殖細胞特異的メゾ複雑体の形成機構から、それらがトランスポゾンを抑制する分子メカニズムまでが、分子レベルからオルガネラレベルに至る幅広いスケールで明らかになることが期待される。これにより、生殖細胞がいかにしてゲノムの安定性を維持しているのかについての理解が深まるものと考えられる。

研究概要図

主な研究業績

  1. Hiroya Yamazaki, Yurika Namba, Shogo Kuriyama, Kazumichi M. Nishida, Asako Kajiya, Mikiko C. Siomi. Bombyx Vasa sequesters transposon mRNAs in nuage via phase separation requiring RNA binding and self-association. Nature Communications, 14, 1942 (2023)
  2. Hiroya Yamazaki, Masatoshi Takagi, Hidetaka Kosako, Tatsuya Hirano, Shige H Yoshimura. Cell cycle-specific phase separation regulated by protein charge blockiness. Nature cell biology, 24, 625-632 (2022)
  3. Hiroya Yamazaki, Hidetaka Kosako, Shige H Yoshimura. Quantitative proteomics indicate a strong correlation of mitotic phospho-/dephosphorylation with non-structured regions of substrates. Biochimica et biophysica acta. Proteins and proteomics, 1868, 140295 (2020)