公募研究(2024-2025年度)

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公募研究(2024-2025年度)
A02班

ミトコンドリア–小胞体接触の形態と大きさの制御機構の解明

Richard Wong
平林 祐介(研究代表者)
東京大学 大学院工学系研究科 准教授

計画研究の概要

ミトコンドリア−小胞体接触場(Mitochondria-ER Contact Sites; MERCS)は、酵母から哺乳類まで非常によく保存された細胞内微細構造である。MERCSは重要な細胞内現象を司る生化学反応の構造場として機能するため、その制御メカニズムの解明は非常に重要である。MERCSではミトコンドリアと小胞体の脂質二重膜同士が5-30 nmまで近接する。この微細な距離の調節にはこれらのオルガネラ間を繋留するタンパク質が重要であるが、これまで我々は小胞体タンパク質PDZD8がMERCS形成に必須であることを明らかにしてきた(Hirabayashi et al. Science 2017)。しかしPDZD8がMERCS内のどこでどのように働くことで、ナノメートルスケールの膜間距離を維持しながらマイクロ立方メートル近くの空間に渡ってMERCSを拡げるのか、いわばクロススケールを橋渡しするメカニズムはほとんど不明である。本研究計画では、PDZD8の持つ天然変性領域(Intrinsic Disordered Region: IDR)のMERCSの数百ナノメートルスケールの3次元的構造への拡大への貢献を明らかにする。そのために、連続切片電子顕微鏡(電顕)による3次元的観察、脂質膜とタンパク質を同時に観察する全く新しい手法の開発を行い、PDZD8などのMERCSタンパク質がMERCSの形態上の「どこで」働くのかを決定する。これにより、ミトコンドリアー小胞体接触の形態と大きさの制御機構を解明する。

研究概要図

主な研究業績

  1. 1. Nakamura, K., Aoyama-Ishiwatari, S., Nagao, T., Paaran, M., Obara, C.J., Sakurai-Saito, Y., Johnston, J., Du, Y., Suga, S., Tsuboi, M., Nakakido M., Tsumoto K., Kishi Y., Gotoh Y., Kwak C., Rhee H.W., Seo JK, Kosako K., Potter C., Carragher B., Lippincott-Schwartz J., Polleux F., Hirabayashi, Y. Mitochondrial protein FKBP8 captures PDZD8 to form mitochondria-ER contacts. bioRxiv, 2023, 10.1101/2023.08.22.554218
  2. 2. Shogo Suga, Koki Nakamura, Bruno Humbel, Hiroki Kawai and Yusuke Hirabayashi. An interactive deep learning-based approach reveals mitochondrial cristae topologies. PLOS Biology, 21(8), e3002246, 2023