細胞内で区画化されたGPCRシグナル伝達を司るメゾ複合体の解明
計画研究の概要
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)をはじめとする膜受容体は薬の主要な標的分子である。生細胞内で標的分子の拡散動態・多量体形成・2分子間相互作用を同時に定量できる手法は限定的であり、薬理学・創薬分野において細胞内1分子計測の潜在的な需要は高い。我々のグループはこれまでに細胞表面における膜受容体-エフェクター間相互作用の1分子動態計測・解析のワークフローを構築してきた。しかしながら、GPCRは細胞表面だけでなく、細胞質中のエンドソームや核においても空間的に区画化されたシグナル伝達を制御することが明らかになっている。GPCRを標的とする薬の作用機序を解明し、創薬を推進する上で、従来は形質膜に限定されていた計測可能範囲を細胞全体に拡張することが求められる。
本領域の推進する「クロススケール新生物学」において、我々のグループは、細胞の任意の領域で1分子計測ができるホールセル1分子自動計測システムを開発し、「GPCRメゾ複合体は形質膜・エンドソーム・核でどのようにシグナル伝達を司るか?」という問いに答えたい。また、本領域の推進する「クロススケール細胞計測センター」の中で、本顕微鏡システムを用いた共同研究を進め、細胞内で生じる多様なメゾ複雑体の構造動態と機能の理解に貢献できると期待される。
主な研究業績
- Yutaro Kuwashima, Masataka Yanagawa, Masashi Maekawa, Mitsuhiro Abe, Yasushi Sako, Makoto Arita. TRPV4-dependent Ca2+ influx determines cholesterol dynamics at the plasma membrane. Biophysical Journal 123(7):867-884, 2024
- Kouki Kawakami, Masataka Yanagawa, Suzune Hiratsuka, Misaki Yoshida, Yuki Ono, Michio Hiroshima, Masahiro Ueda, Junken Aoki, Yasushi Sako, Asuka Inoue. Heterotrimeric Gq proteins act as a switch for GRK5/6 selectivity underlying β-arrestin transducer bias. Nature Communications 13(1):487, 2022
- Masataka Yanagawa, Yasushi Sako. Workflows of the Single-Molecule Imaging Analysis in Living Cells: Tutorial Guidance to the Measurement of the Drug Effects on a GPCR. Methods in Molecular Biology 391-441, 2021
- Masataka Yanagawa, Michio Hiroshima, Yuichi Togashi, Mitsuhiro Abe, Takahiro Yamashita, Yoshinori Shichida, Masayuki Murata, Masahiro Ueda, Yasushi Sako. Single-molecule diffusion-based estimation of ligand effects on G protein–coupled receptors. Science Signaling 11(548) eaao1917, 2018